CA時代に大好きだった接遇経験を生かして、
マナー・接遇講師の道へ

和佐野 百合香Yurika Wasano

出身 :ANA(全日空)グループ
現在の仕事 :接遇インストラクター

大学卒業後、JALグループとANAグループの客室乗務員として国内線を中心にフライトを行い、チーフパーサーとして乗務。在籍中は、新人育成、安全を推進するセーフティーリーダー等にも従事。

現在は、CAキャリアの接遇講師・接遇インストラクターとして、総合病院・クリニックを中心とした医療機関の接遇研修や現場指導において活躍中。

現在、主に行われている仕事について教えてください。

CAキャリアでのマナー・接遇講師です。総合病院・クリニックなどの医療機関で、医療従事者に対する研修を行ったり、現場で接遇方法を直接指導するインストラクターとして活動しています。

CAを辞めてから現在までの経歴について教えてください。

大学卒業後、某日系航空会社にCAとして入社しました。2年ほど地元から離れて勤務していたのですが、次第に「地元に戻ってキャリアを積みたい」と思うように。その後、別の日系航空会社に前職と同じくCAとして転職しました。いずれの会社でも国内線を中心にフライト業務を行い、チーフパーサーとしても乗務しました。新人育成、安全を推進するセーフティーリーダー等にも従事しました。

CAの仕事は楽しく、長く続けたいという思いはありました。しかし、結婚、出産を経て育児をしていく中で、今後の働き方を考えるようになりました。もちろん、勤務先の航空会社には子育て中の女性をサポートする制度はありました。しかし、結婚を機に夫の仕事の都合で空港から離れた場所に住むことになったため、特に通勤の面で折り合いをつけるのが難しくなりました。悩みに悩んだ結果、最終的には退職を決めました。

ちょうどその頃、以前の転職活動でお世話になったCAキャリアから「CA退職後は、マナー・接遇講師としての道もある」と聞きます。今までの経験が生かせるのなら挑戦してみたいと思い、講師として新しいキャリアをスタートすることにしました。

CA時代と比べて、ライフスタイルはどのように変化しましたか?

CA時代は独身だったため、1日に複数回のフライト、宿泊を伴うフライトも行っていました。月に10日ほどある休日には好きなことをしていたので、仕事もプライベートも充実していました。CAの仕事に誇りを持っており、当時は、将来CAを辞めることになるとは少しも考えていませんでした。

しかし、結婚、出産を経て、自分の中で「家族との時間も大切にしながら、自分のペースで仕事をしたい」という思いが生まれてきました。CAとして両立していく方法を育休中にシミュレーションしましたが、一番のネックは家からの通勤のしづらさ。夫の仕事の都合で居住地を決める必要があったため、転居は難しく、自分の中で「CAを辞める」という選択肢も初めて浮かび上がってきました。

私のまわりには結婚・出産を機にCAを退職する人が少なく、「CAを辞めて、自分に何ができるのか? 仕事と家庭の両立を実現させるにはどうしたらよいのか?」と悩み続けました。そんな中、CAキャリアからマナー・接遇講師として活躍の場があると聞いたのです。自分の想像していなかったフィールドでCAの経験を生かせると知り、驚きとともに自分の可能性を感じました。

マナー・接遇講師を始めて約3年。現在は月に2日ほど講師として働いています。1日あたりの勤務時間は3~5時間程度です。子どもは幼稚園に通っており、私の勤務の時間帯によっては延長保育も利用しています。今は地元で行える講師業のみ受けていますが、子どもがもう少し大きくなったら、他県への出張などにも対応できるようになるのではと考えています。

CA時代と比べると、会社と調整しながら自分のペースで講師として働く日数を決められるようになったのが、一番大きな変化です。

現在行われている仕事のやりがいや魅力はどのようなところですか?

CAキャリアでは、主に総合病院やクリニックでのマナー・接遇方法について指導しています。一般的な講師業だと、研修を数回行って終了というパターンが多いと思います。しかし、CAキャリアはコンサルティングの要素も強く、研修だけでなく現場指導も含めて数か月から数年単位でお客様とお付き合いをさせていただくことが多いです。医療従事者の皆さんの成長を長期に渡って見届けられるのは、CAキャリアでの講師業の魅力です。

私自身、CA時代はお客様への接遇が大好きでした。今は講師として医療に携わる方々へ患者様への接遇の際のポイントを指導させていただいていまして、天職のように感じています。講師として携わった病院に届いた患者様からの声の中で、お褒めの言葉が増えてきたとの報告を受けると、「私も病院に貢献できているんだな」と、やりがいを感じます。

また、講師としてのキャリアを積んでいく中で、近年では、お客様の要望に応じて、指導プランや指導方法を提案させていただけるようになってきました。総合病院には複数の講師で指導に伺いますが、現在ではクリニックには1人で指導に行かせていただいていますし、タクシー会社の新人育成など、医療現場以外での指導も担当させていただけるようになってきました。自分の講師としての幅も広がってきているのが、とてもうれしいです。

今後のキャリアプラン(ライフプラン)はどのように考えていますか?

CAと同様、講師業にも非常にやりがいを感じています。今後も、家庭との両立を第一に考えながら、医療接遇の講師としての経験を積んでいきたいです。病院といっても、総合病院やクリニック、また診療科目によっても接遇方法は変わってきますので、どのような場面にも対応できる講師になりたいです。

お客様(医療従事者)により良いマナー・接遇方法を伝えていくことで、その先にいるお客様(患者様)にしっかりと安全・安心を届けられるよう、これからも講師として努力していきます。

これからのキャリアを考えているCA経験者の方へメッセージやアドバイスをお願いします。

今、CAを続けている方は、昔からCAになりたくて掴みとったキャリアを手放す日が来るとはあまり考えていないかもしれません。そのため、自分の人生の節目で「このまま続けるのは難しいかも」という感情が出てきた際、とても悩まれることと思います。実際に私も長い間悩みました。

女性は、どうしても結婚、出産、育児という節目で、今後のキャリアを考えなければいけない状況になることが多いと思います。私自身、育児をきっかけにCAを辞めるという決断をすることになりましたが、当時は「CAを辞めた後」のキャリアプランはあまり想像できていませんでした。退職後、過去のご縁からCAキャリアでのマナー・接遇講師としてのキャリアを無事スタートすることができましたが、未経験で講師として働き始めた時は、「自分に講師が務まるのか」と、日々不安と緊張の連続でした。しかし、講師を始めて3か月が過ぎた頃、「これほどCA時代のキャリアを生かせる仕事はない!」と思えるくらい毎日が充実してきたのです。今では講師としてもっとキャリアップしていきたいという思いが強く、良い仕事に出会えて本当によかったと思っています。

もし、CAとしての今後のキャリアに悩んでいる方がいましたら、
・自分の人生、やりたいことの優先順位を明確にする
・自分のCAとしての今までの経験を1つ1つ棚卸しておく
・CA経験者に、今はどのようなキャリアを歩まれているのか聞いてみる

など、今できることから少しずつ取り組んでいくと良いと思います。ご自身が満足する人生にたどり着けるよう、応援しています。

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